平和主義

平和主義とは一般的に言えば平和愛好の精神という事になりますが、一定の主義となれば、国際的にも国内的にも、合議と協調を持って一部の好戦的分子の野望を封じようとする、忍耐強い人間愛を基幹とした運動、政治、思想を総括的にこう言います。しかし単なる人間愛の他に、暴力に対する知力の優位という認識が筋金となっています。暴力は動物的であり、人間の尊厳をおかし、最大の暴力たる戦争はもっとも非人間的で、平和こそ人間にふさわしい生存方式だと主張します。絶対平和主義で、いかなる場合であっても暴力と軍事力の発動を否定し、したがって軍備をも否定しようとします。ギリシャ時代にアポロンの神託によって、紛争を解決しようとしたり、キリスト教が宗教的世界国家を建て、信仰と博愛によって一切の紛議を絶滅しようとしたのも、絶対平和主養の現われでした。
平和主義は古く、かつ熱心に支持されたにも関わらず、人類歴史の大半が戦争の歴史であるという事実は、絶対平和主義の無力を証明することとなります。よって現在では、平和を脅かす不義や暴力には暴力をもって対抗し、その勝利のうえに平和を招来するほかないという平和主義に変容しつつあります。
戦争を起こす能力も意欲もない国民大衆は、例外なく平和主義者ですが、軍事能力を持つ権力者には軍事力の勝利によって平和を確保すべきだという平和主義者が少なくはありません。しかし、いかに勝利しても、戦争の惨禍をだれが引き受けるかを考えれば、階級的利己心が働いていることは否定できません。平和主義は今や精神の問題でなく社会機構の間題としで、根本的に考え直されねばならぬ時期にきています。

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