自然主義

自然主義とは歴史、社会、人間的作為などによって汚されずに、与えられたままの姿を本来の姿として、そこに帰ることを要求する考え方で、超自然を激しく否定し、もとのけがれなき姿に帰ることが、人間の最高の要請だと考えました。根底には人間の性善説が横たわっており、諸悪はむしろ歴史と社会の産物にすぎないと見ています。ルソーがこの傾向の創設者になります。
芸術上で自然主義という場合にも、以上の基本的性格は変わらずに。ただここでは歴史や文化によって浸透されないものが自然的姿と考えられるのではなく、逆に歴史的社会のうちにあるがままの姿が自然と考えられました。したがって不自然とは意識的な作為のことであり、芸術的自然主義は、それゆえ人生の醜悪面を特に描写する傾向を持っています。ゾラのルーゴン・マッカール双書が代表約なもので、日本では倫理的な自然主義は育たず、主として文学の性界で開花した花袋、籐村、自鳥などが、やがて私小説主義へと転化し、もとの理想とは遠い場に出てしまいました。

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