禁欲主義

禁欲主義とはギリシャのゼノンから発して、ローマではセネカ、エビクテートス、キケロなどによって受けつがれた倫理学の一種です。彼らがストア派と呼ばれたために、その哲学もストア主義と言われるのです。人間の感覚や知覚や官能は、徳に達するためには、最大の障害であり、できるだけこれに悩まされない生活こそが理想的であるとしました。したがって、厳しい禁欲主義への道がこれによって準備され、やがては、現実世界を軽蔑して、神の観照にふける修道院生活を理想とする結果にもなります。近世の敬虔主義、ピュリタニズムにもこの傾向が著しく、東洋的な無為とは異なりますが、静寂主義の点はよく似ていました。快楽主義の反対と考えればよく、現代では、唯心論的な宗教生活の中に生きている他はほとんど社会的な意味を失いつつあります。それは資本主義社会でも社会主義社会でも、金銭的欲求、欲望充実こそ、人間的福祉の根本と考えられるようになってきているからです。

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