現在主義への傾斜

現在主義への傾斜とはポーランドのマルクス主義哲学者アダム・シャフの新邦訳、歴史と真理の中で使われている言葉で、歴史の真理については、事実の叙述、客観的な本質描写以外には提えられないという科学的、歴史主義の主張と、こういった非党派性こそ、歴史に関する限り最も非科学的だという主張とが対立してきました。A・シャフは、後者の立場に立つことはもちろんですが、だからといってかつて戦前のイタリアの哲学者クローチェ一派のような歴史はすべて現在の歴史だとする現在主義にも賛成できないという、現在立っている時点から歴史を捉えようとする部面では、クローチェを容認できますが、いわゆる現在が党派的現在以外の在り方をすることはできないという点で、現在主義とは袂を分けなければならないということが、人間の知識が常に欠陥をもっていることを認め、部分的認識の集積の上に漸次高度な完全認識に到達するというレーニンの思想を復活させ、認識の党派性についても従来の硬直した亜流マルクス主義者たちより一歩前進した柔軟性を獲得している点で評価され始めた思想家の一人だということができます。

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